AIエージェント設計とは何か

AIエージェントとは、複雑なタスクや目標を達成するために、「必要な行動を自ら決定し、自ら実行する」システムのことを指します。

たとえばChatGPTも、必要に応じてネット検索を行って回答を生成しますが、企業でAIエージェントを活用する場合には、企業固有の情報を活用できなければ意味がありません。 業務マニュアルを検索したり、データベースを参照したり、業務的な観点で判断して回答することが求められます。

つまり、LLM(大規模言語モデル)を業務用途に特化した応答ができるように設計することがAIエージェントの設計業務です。

※参考書籍:『現場で活用するためのAIエージェント実践入門』(講談社, 太田真人, 2025)
実務設計での考慮点が整理された良書です。

現場で活用するためのAIエージェント実践入門 (KS情報科学専門書)
太田真人, 宮脇峻平, 西見公宏, 後藤勇輝, 阿田木勇八
講談社
2025-08-18




AIエージェント設計の自由度設定

AIエージェントの設計では、「どの程度の自由度を持たせるか」が重要なポイントになります。 あらかじめワークフローを定義して動作させる方法もあれば、LLMにワークフローそのものを動的に制御させるパターンもあります。

たとえば、LangGraphでSupervisor(管理者)を利用するケースは後者の例です。Supervisorが状況に応じて別のエージェントにタスクを割り振り、結果を受け取って次のエージェントへ処理を引き継ぐ流れでタスクを解決していきます。

参考記事:LangGraphとOllamaでAIエージェントを構築

AIエージェント設計が難しい理由

実務的に見ると、AIエージェントの設計はかなり難易度が高いです。

①深い業務知識がないとまともなプロンプトが書けないし、処理の設計ができない。
②LLMの出力は確率的であるため、処理の再現性を完全に担保できない。
③LLMは長文コンテキストや複雑なタスクになると精度が低下しやすい。

つまり、たくさんの業務マニュアル・規約類を読んで理解して、業務担当者からヒアリングして業務フローと専門用語を一つ一つ理解し、AIエージェントで再現したい処理フローを整理して、LangChain・LangGraph等で実装して、評価して改善して、ということを実施することになります。

当然かなり難しいですし、結構大変です。

AIエージェント設計は不要にならない理由

ただここで一つ疑問点が浮かびます。 「LLMが年々賢くなるなら、いずれAIエージェントの設計そのものもLLMが行うようになり、人間の設計者は不要になるのでは?」という懸念です。

確かに、実装の自動化はかなり進むでしょう。 業務要件と参照ドキュメントを与えれば、LLMがAIエージェントを設計・実装することは十分可能です。しかし、それでもAIエージェント設計者の仕事はなくならないと考えています。その理由は、LLMが原理的に解けない領域が存在するからです。

LLM単体では原理的に解けない領域

AIエージェントの判断処理では、人間の意図を再現できないケースがあります。たとえば、人間が「この状況下ではAよりBを優先してほしい」といった動的な価値判断を期待しても、LLMは訓練データ上の一般知識に基づくため、同じ判断を再現できない場合があります。

また、AIエージェントのタスクの一つとしてRAGを利用するケースは非常に多いですが、検索したい情報がそもそもドキュメントに含まれていないケースでは、情報欠落による限界が生じます。

さらに、業務には言語化されていない暗黙知が多く存在します。暗黙知は、現場の人の頭の中にあるので、何らかの方法で言語化する必要があります。どんな確認観点があるのか、どのような基準で判断しているのかなど、言語化のハードルは高いです。扱う語義も、専門用語なら教えればいいのでまだなんとかなりますが、一般用語と同じ言葉だけど意味が異なっている用語だと辛いです。

加えて、LLMは一般化ではなく平均的な判断を出しがちなため、例外的なケースの判断も難易度が高いです。

まとめると、LLMがこれから進歩しても、以下のような問題を解くのは難しいと思われます。

情報不足:ドキュメントに書かれていない情報の回答、判断。
評価基準の変動:時間や状況に応じて評価基準が変わるケース。
語義のずれ:言葉は同じでも、部門で意味が違う場合、正確な意味の理解。
例外的な判断:件数が少ない例外処理の判断、ルールを破るタイミングの判断。

これらは、LLMが確率的生成モデルであり、因果的・価値判断的な推論を行う仕組みを持たないことに起因します。

AIエージェントの設計経験の転職市場価値

今後、AIエージェントを作ること自体のハードルは下がっていくでしょう。 しかし、業務で使えるレベルに仕上げることは依然として難しい課題のままです。なので、いろんな会社や業務部門から、「AIエージェント作ってみたけど精度が低い、使えない」という言葉を、これから嫌というほど聞かされるようになるのではと思います。

そのため、経験を積んだAIエージェント設計者は、これから膨大な数のAIエージェントが作られる中で、よく言えばコンサルのようにアドバイザー的に入ったり、悪く言えば炎上プロジェクトの火消しのような役割を、ここ数年はさせられるのではないかと考えられます。

逆にいうと、新規案件に加えて、既存案件の改善もあるので、これからAIエージェントの業務検証の案件は、かなり増えることが想定されます。

今AIエージェント設計を学び、AIエージェントの実務経験を積むことは、これからの転職市場で生き残る有効な方法と言えそうです。 

参考記事:生成AI時代のITエンジニア向け転職エージェントの選び方