21世紀に最も重要なスキルは何でしょうか。

様々な答えがあると思いますが、おそらく多くの人が、「試す力」と答えるでしょう。仮説を立てて検証して答えを導くという手法は、自然科学分野の根幹であり、サービス企画や新規事業開発の最適解であり、GAFAの成長エンジンです。世界で最も試行錯誤している組織は、おそらくGoogleでしょう。

機械学習は、データに対する試行錯誤をコンピュータ上で何万回何億回も高速でできます。だから技術として高速で成長できています。加えてそれらの検証結果が、論文やネット上で公開されているのだから、恐ろしいまでのスピードになっています。

使い方によっては数百億円の価値を生む資産が、インターネットに転がっているのです。情報が公開されている以上、勝負ポイントは「手を動かした時間量」が全てです。

Pythonは機械学習の技術資産のパスポート

機械学習の技術資産は、論文やライブラリで公開されています。ライブラリを使うためのプログラミング言語はほとんどPythonです。Pythonが書ければ、先人の機械学習の成果を利用することが出来ます。

Pythonは、世の中の技術資産を自由に使えるパスポートです。先人に感謝し、自由に活用すべきです。

最近AIコンサルがかなり盛り上がっています。大手企業からコンサルティングファームに結構な人数が転職しています。私の知っている限りでは、外資系も日系にもエース級が移っており、大手企業にたまにいる優秀なITエンジニアや、機械学習の研究開発をしていた人材が移っています。

彼らは当然のようにPythonや機械学習ライブラリを使いこなします。技術的な理解があった上で顧客にコンサルティングサービスを提供しています。AIベンチャーに全部丸投げするようなことは彼らはしません。

リーダーやマネージャーがPythonでモデルを作れる人と作れない人では、AIプロジェクトの成功率が段違いです。経験があれば、肌感覚で案件の実現可能性を目利きできるからです。いわば機械学習プロジェクトの目利き力は、データ分析実務の積分値です。

表面的な人工知能の本を何冊読んでも、インターネットでたくさん調べても、プロジェクトの目利き力はあがりません。自分の手でPythonを書いてデータ分析することが絶対に必要です。

ビジネス側の人間はPythonを触らない

しかし多くのビジネスサイドの人間はプログラミングをやりません。自分に出来ない向いてないと思っています。
私もかつてビジネス側の人間だったので気持ちはよく分かります。コードを見ても意味が分からないですし、エラーが何度も出ると投げ出したくなるんですよね。

例えば営業職の人は、顧客が何を求めているのかを調べるために、様々ヒアリングするはずです。そして仮説を立てて、提案書を持っていき意見交換するはずです。そうやって顧客のニーズがだんだん見えてきます。試すための根幹は、ヒアリングと仮説構築力でしょう。

同じことです。知りたいことが顧客からデータの傾向性に変わっただけです。ただヒアリングスキルの他に、Pythonが必要になっただけです。

一般論ですが、日系企業はエンジニアに対するリスペクトが低いです。日系大手企業の4割以上がIT部門を子会社化していることがその証左です。プログラミングは下請けがやるものという意識を強く持っているのが日本の大企業です。なぜなら彼らは、ITエンジニアをコストと捉えているからです。

DX時代はプログラミングの必要性が高まる

機械学習全盛になった今はどうでしょうか。AIエンジニアに1000万円用意しても、あなたの会社に入ってくれるかどうかは分かりません。外資系企業が3000万円用意しているからです。高度なシステムをくみ上げるITエンジニアも同様でしょう。

2020年に入り、エンジニアは本当の意味でコストから利益の源泉に転換しました。結果的にエンジニアの待遇は改善しました。この流れはこれから10年以上続く見込みです。

世の中では「DX」と言われ、日本だけではなく世界中のトレンドになっています。ここ数年、機械学習やクラウド技術が急速に進化しており、これらを活用して事業やビジネスモデルを変革することが、企業の競争戦略となっています。
特に近年のコロナウイルスの流行で、企業のDX化がより進み、多額の投資が実行される可能性があります。

このDX時代に、プログラミングがまったく出来ないビジネス部門が、果たしてこれからまともな価値を生み出せるでしょうか。私はそうは思いません。現代の経営は、プログラミングそのものです。

今は小学生がプログラミングを学ぶ時代です。ビジネスリーダーが全くプログラミングできないというのは、恥ずかしい時代になってきます。全ての業界でコンピュータが使われており、未来の仕事の大部分がコンピュータが担うためです。

人とのコミュニケーション能力はもちろん大事なのですが、それと同じくらい大事なのはコンピュータとのコミュニケーション能力(=プログラミング)です。

Python(AIプログラミング)の勉強法

Pythonの習得は、手で動かすことが最も速いです。百聞は一見に如かずです。人工知能の本を10冊読むよりも、自分でプログラミングした体験は、より具体的な事実として五感で理解できます。

Pythonと機械学習の参考になりそうな過去記事を掲載します。

<勉強法>
AIエンジニアが教えるゼロから機械学習の勉強法
大学不要?人工知能(AI)を独学で勉強する方法

<Pythonで機械学習>
PythonのMatplotlibでグラフ作成すればデータサイエンティストの仲間入り
Pythonでロジスティック回帰分析して未来予測する
ランダムフォレストで特徴量の重要度を評価する

プログラミングスクールに通うという道もありますが、費用も高額ですし、ネット上に質の高い情報がすでに十分あります。

最もおすすめの勉強方法は、機械学習の技術書を1冊選んで完璧にすることです。かなり自信になりますし、実務でも十分に役に立ちます。本はあなたが気に入った本でよいと思いますが、例えば以下の本はとても良いと思います。



ちなみに私は以下の本で学びました。



とにかく技術書を1冊完璧にすることがとても大事です。

ビジネス人材がPythonを学ぶメリット

ビジネス人材がPythonを学ぶメリットは3つあると思います。

①機械学習が出来る高度DX人材としてチート級の働きができる

分析業務の多いマーケターや、人事評価や給与など外部に出せないデータを持つ人事担当者が、PythonとJupyter Notebookでデータ整備や回帰分析が出来ると非常に強いです。業務的な仮説を持ったビジネス人材が分析するので、成果も生みやすいです。

これは結構チート業だと思っていて、非エンジニア界隈の中でJupyter Notebookがんがん回して試行錯誤できるというのは、錬金術師が一般人に無双するくらいの強さがあります。ある意味最強の「錯覚資産」です。

数百万円のお金をかけて国内MBAを行くより、よほど人材価値を高めることができるでしょう。

②社内の機械学習案件に参画しやすくなる

周囲にPythonが出来る人がいない職場はチャンスです。そこであなたがPythonでAIプログラミングが出来るようになれば、社内でPythonの大先生(職場の第一人者)になれます。すると例えば、社内でAIを活用した新サービス開発や、AIを活用した業務効率化プロジェクトが立ち上がった場合、あなたに声がかかる可能性が高まります。

AIプログラミングのスキルがあれば、実務の勘所が分かるので、機械学習案件の発注者としてはエース級の働きができます。AIエンジニアと対応に議論し、プロジェクトでリーダーシップを発揮できます。

ビジネスパーソンの大半は、なんだかんだ言ってPythonのコードを書けないので、その中で技術書を1冊習得している人材は希少です。

「社内に案件がない」と思われるかもしれませんが、近い将来あなたの会社の情報システムにも、必ず機械学習が組み込まれていくでしょう。

③AIエンジニア・AIコンサルタントに転職できる

Pythonや機械学習を学んでいく中で、本気で機械学習の仕事をしたくなった場合、AIエンジニアやAIコンサルタントに転職することも可能です。私自身もまったく未経験からAIエンジニアに転職しました。

前職は企画職だったのですが、当時は自分の専門分野がないことがずっと悩みでした。自分の専門技術を持ててから、精神的な安定がとても図れるようになりました。

もちろん最初はなかなか大変でしたが、毎日たくさんの学びがあり、日々自分の成長実感が得られるので、わりと幸福な仕事人生を歩めています。

転職の体験談:転職エージェントにボコボコにされて未経験からAIエンジニアに転職した話

強い武器(Python)を持とう

機械学習は数ある技術の一つです。「ハンマーを持つ人にはすべてが釘に見える」と言う言葉もあります。何でもかんでも機械学習で解決するのは間違っています。

しかし、素手で戦うよりハンマーを持っていた方が圧倒的に強いです。しかもそのハンマーは、これからたくさん使う場面が増えてきます。世のITシステムの大半にこれから機械学習が組み込まれていくからです。

何よりPythonは楽しいです。子供が遊ぶようにいろいろ試していけば、短期間で身につくでしょう。ワクワクさんのようにPythonで遊んでいれば、きっと素晴らしい武器を手に入れられるはずです。

関連記事:未経験からAIエンジニアになる方法