「AI人材」の求人数が増加してきました。

AIを活用したサービスが本格的に立ち上がり、事業開発責任者やプロダクトオーナーなどのポジションで採用が本格化しています。

また、AI分野の売上が急拡大したことによって、オペレーションを構築したりチームビルディングできる人材のニーズも高まっています。加えて、販売促進やAI営業の求人も増えてきています。

業界的には、主力のインターネット業界に加え、金融や不動産で特に需要が大きいようです。

市場を概観すると、事業戦略やソリューション営業など、いわゆるビジネス系職種がかなり増えた印象です。AIエンジニアの採用ももちろん多いですが、ピークはもう少し先になるように思われます。

テクノロジーは一つの武器であり、武器を使うためには戦場が必要です。どの戦場が実入りが大きいのか、他社に勝てるかどうかなど、ビジネスモデルの構築とそれを支える組織が必要になります。

では、ビジネス分野を担う人材は、どのくらいAIの知識が求められるのでしょうか?

参考記事:未経験からAIエンジニアになる方法

全てのAI人材に「AIの原理」の理解が求められる

メタップス社長の佐藤航陽さんは、著作「未来に先回りする思考法」で、テクノロジーの理解度を4つのレベルに分けていました。

1使える
2ポテンシャルがわかる
3なぜ出来たのか原理から理解している
4作れる


当然ながら、AIエンジニアは、4まで身に付けてなければいけません。
では、AIを開発することはないけれど、AI領域で事業戦略を立案する人は、どこまで理解しておくべきなのでしょうか。

例えば、AIのニュースを追いかけているのは、2のレベルと言えます。ニュースなどで、AIの概要と事例は知っている。そのため、AIのポテンシャルは理解できます。しかし、それでは戦略を立てることは難しいです。

事業戦略を立てるという事は、市場と技術を結ぶストーリーを描くことです。現在の事例を分析すれば、今の世の中でできることは分かるかもしれません。しかし、将来どの方向に進んでいくべきかは、技術の方向性を理解できなければできないことです。

また、具体的にどのように技術やリソースを調達して、進んでいくようなストーリーは立案出来ないでしょう。

言うならば、AI市場という波の中で、クラゲのようにふわふわ漂っているような感じです。自分で泳ぐことはできないでしょう。

やはり最低3の「原理の理解」が求められます。原理が分かれば応用できます。つまり、原理が分かれば時代の流れにもキャッチアップできます。

では、「AIの原理」とは何でしょうか。

AIの原理とは「関係性」を明らかにすること

AIの原理とは、関係性を明らかにすることです。例えば、人間と商品の関係性を明らかにすることが出来れば、より商品を買わせる方法もわかります。また、株価とニュースの関係性を明らかにできれば、将来の株価を予測することもできます。

関係性を明らかにするためには、そのためのデータが必要になります。人間と商品の関係性を明らかにしたいならば、過去の購入履歴のデータが必要でしょう。そのデータから、AIを使って関係性を明らかにします。

関係性は、関数で表現されます。例えば、人間の年齢とりんごの購入に強い相関性があれば、

y = 0.05 x + 3 
  y:りんごを買う数
  x:年齢

のような、関数が算出されるかもしれません。つまりAIとは、「関係性を関数で表したもの」になります。データxに対して、yという値を出力する関数y=f(x)を作っているのです。

もちろん、上記のリンゴの例くらいなら、人間でも気づきそうですが、例えばデータ項目数が一万を超えたいたらどうでしょうか。きっと人間では、どの項目が一番重要か分からないはずです。しかし、AIならば、人間には見えない関係性を明らかにできる可能性があります。
 

AIが向く分野は「失敗OK」「定常業務」「データある」「大金が動く」

関係性を明らかにすることができれば、ビジネスは一気に拡大することが出来ます。

例えば、「クリーニング屋に来る顧客には、40代女性が多い」という事が分かれば、イケメンの店員に変えれば、売上が倍増するかもしれません。

ただ、やみくもにAIを導入すれば儲かるというわけでもありません。AIが向いている分野と言うものがあります。主に4つあるように思います。
人工知能ブログ画像
上記の項目に合っている分野であれば、AIで大きな効果が見込めるでしょう。

例えばGoogleは、「検索」と「広告」を生業にしていますが、上述の4項目に全て当てはまります。そのため、信じられないような高給でAI人材を集めても、十分な利益を確保できます。人間と広告の関係性を理解して、クリックしやすい広告を表示できれば、収益増加に直結するからです。

一方近年注目を集めている自動運転ですが、②~④には当てはまるものの、①の部分が課題です。運転は絶対に失敗できない領域のため、技術を駆使して、高レベルのAIをつくることが求められています。

これからは、健康領域も非常に伸びるでしょう。例えば、人間と寿命の関係性を明らかにできれば、その人の寿命を予測出来るかもしれません。そうなれば、世の中のライフスタイルが一変する可能性があります。

つまり、どんな関係性を明らかにすべきかのテーマによって、得られる付加価値が全く異なってきます。そして、その答えはgoogleで検索しても出てこないでしょう。

AIでどんな関係性を明らかにするか、問いを立てる力が求められています。またAIの原理を理解できるスキルも必要です。

これからますます、「AIの要件定義ができる人材の価値が高まる」ことは間違いありません。そして現段階で出来る人材は、非常に少ない印象です。

つまり、転職するなら今が大きなチャンスではないでしょうか。

参考記事:
人工知能プログラムの条件は 非決定的で、専門家をまねること
人間がすべきこと~人工知能が得意なこと、苦手なことは?~