人工知能や機械学習を勉強をしているシステムエンジニア(SE)が増えてきていると感じます。

ただでさえIT人材が不足している売り手市場にもかからわず、さらに新しいスキルを身に付けようと休日に勉強を続けるシステムエンジニアを見て、日本を支えているのは、間違いなく彼らのようなエンジニアであると強く感じます。

システムエンジニア(SE)の労働環境は非常に厳しい

これまで日本の情報システムを支えてきたのはシステムエンジニア(SE)です。しかし、必ずしも労働環境は恵まれたものではありません。

SEの労働環境は、3K(「きつい」「帰れない」「給料が安い」)とも、7K(+「規則が厳しい」「休暇がとれない」「化粧がのらない」「結婚できない」)とも言われます。

毎日の深夜残業、残業代は上限付き、無理なスケジュールと仕様変更の多発、納期の遵守。

労働環境が厳しい原因の一つは、システム開発のビジネスモデルが受託契約だからです。受託契約のため、原価と納期を先に決めて開発を行うものの、スケジュールや見積もりが甘い、顧客の仕様変更が発生するなど、想定外の事象が起こることで、納期までに開発が終わらないことで、7Kのプロジェクトが生まれてしまうのです。

もう一つSEの仕事が辛い理由があります。IT業界は、下請け構造が慣例になっています。かつて、そして今も、日本のシステムエンジニアとプログラマーは、大手企業の下請けとして働いています。日本の大企業の約4割以上がIT子会社を持っています。ITエンジニアを安く使い倒すためです。

また独立系のSEは、顧客や大手IT企業に派遣され(特定派遣)、客先常駐エンジニアとして仕事をします

人材派遣会社(SES)と言うのは経営者から見ると非常においしく、技術者を集めて派遣するだけで、売上を立てることが出来ます。つまり、顧客にSEを月100万円で派遣し、SEに月30万円の給与を払うと、経営者は月70万円の収入を得ることができます。別にこれが悪いわけではないのですが、経営的に見ると「SEの給与を下げる=会社の利益が上がる」の等式が色濃く出てしまうので、構造的にSEの給与は上がりにくくなっています。

現場の第一線で開発しているエンジニアやプログラマーにとって、現状のIT業界は必ずしも恵まれている環境とは言い難いでしょう。「コスト」と「品質」が重視される業界で、エンジニアが創造性を発揮することはなかなか難しいです。

参考記事:SEは「7K」って本当?~労働環境の「りある」

AIが作ったプログラムは仕様書より賢い

システム開発では、人間が仕様書を書いてプログラムの機能を定義していました。一方、今流行りのAIや機械学習では、データからプログラムを導きます。人間が機能を考えるのではなく、AIが処理ロジックを定義しています。

これまでの機械学習は、データ量が少なかったりアルゴリズムがあまり賢くなかったりと、人間を超えるプログラムを作ることは難しい状況でした。がんばっても人間と同じくらいの賢さを覚えらせることが精一杯でした。

しかし、最近のデータ量の爆発的増加とアルゴリズムの進歩により、だんだんと局所的に人間の賢さを超えるAIが出てきました。画像分類の精度が、人間の識別能力を超えたことはその好例です。

そしてAIは指数関数的に技術的発展を遂げています。すると、人間が考えた仕様書よりも、AIが作ったプログラムの方がはるかに賢くなっていきます。グラフにすると以下の通りです。

機械学習とは10

これから先、仕様書の通りに開発するエンジニアと、AIを開発できるエンジニアのどちらが将来性があり、どちらが価値を生むか明らかではないでしょうか。

ITエンジニアがAIエンジニアに転身すべき理由

SEがAIエンジニアに転身すべき理由は2つあります。

理由1.AIエンジニアは年収が高いから

経済産業省は、ビックデータや人工知能に関わる先端IT人材は、2020年に4.8万人不足すると予測しています。

現在多くの企業が、AI・機械学習・DeepLearningの実証実験を行っています。なぜなら経営者は、人工知能を駆使して売上を上げて、コストを削減し、業務変革したいと考えているからです。

そのためたくさんの企業が、AIエンジニアを採用したいと考えており、採用の難しさから年収の予算枠も高まりつつあります。

お伝えしたいことは、人材不足感の高まりから現在のAIエンジニアの給与ももちろん悪くないのですが、今後のAIの発展によってSEの給与とAIエンジニアの給与差は拡大していく可能性が非常に高いという事です。

サイバーエージェントやDeNAなどが、職種別採用でAIエンジニアに高給を出すのは現段階ではマイノリティですが、今後こういった企業がほぼ確実に増えてくるでしょう。

理由2.AI開発はデータサイエンスの力で価値にレバレッジが働くから

SEの主な仕事は、仕様書の通りに設計しプログラミングすることです。しかし、この21世紀に、仕様書通りに1行1行プログラミングするなんてちょっとあり得ないと思うのです。間違えるに決まってるじゃないですか。

一方AI開発では、仕様書や設計書は基本作りません。顧客の言われた通りに開発するのではなく、データからAIを開発することが仕事です。

もちろん結果を整理して顧客に報告することはありますが、仕様書のような詳細な資料は作成しません。極論すると、分析テーマだけ顧客と握って、データを借りればそれでいいのです。

加えてAIエンジニアは、比較的立場が強くなる傾向があります。AI開発には厳密な仕様書がありません。アルゴリズムにもよりますが、AIの中身は人間にはわかりません。しかし、確かにそのAIは、顧客企業の売上を増大し、コストを大幅に下げるようなロジックが組み込まれています。

その難しいAIを解説できる人は、AIエンジニアだけです。顧客はAIエンジニアの声に傾けて、話を聞きたがるでしょう。かつての邪馬台国の卑弥呼と農民の関係性と構造的には同じです。
人工知能11
機械学習では、たった100stepのコードが100億円の価値を生み出すことがあります。世の中のAIエンジニアが、楽しそうに仕事をしている理由は、こういった理由にあるのではないでしょうか。

参考記事:未経験からAIエンジニアになる方法

AIエンジニアに必要な4つのスキル

AIエンジニアに求められる最低限のスキルが4つあります。

①Pythonでコードが書ける

Pythonはスクリプト言語のため、基本的にはプログラムを書いた順に処理を行います。そのため、人間の論理的思考に近いです。

②機械学習ライブラリが使える

・NumPy, Pandas, Matplotlibでデータの前処理や解析ができる(特にpandasが重要
scikit-learn, PyTorch, gensim(自然言語処理の場合)で学習ができる

③機械学習・統計の知識がある

・教師あり学習と教師なし学習
・前処理、特徴量設計学習と評価
・正規分布、標準偏差、分散
・相関係数、重回帰分析、ロジスティック回帰
.・ディープラーニング(テーブルデータでは不要)

④機械学習の数学の知識がある

・線形代数、ベクトル、行列
・微分
・確率

参考記事:AIエンジニアが教えるゼロから機械学習の勉強法

必要な知識が4つもありますので、大変かと思われたかもしれません。しかし、ITエンジニアの方にとって、①と②はそこまでハードルは高くないと思われます。

③も良質な教材を選び、1ヶ月みっちり勉強すれば、基本は十分に習得できるでしょう。scikit-learnのサンプルコードを触り、統計検定2級に合格できればベストです。

きっと④が鬼門になります。特に高校数学に不安がある方にとって、数学の習得は厳しいものになります。機械学習の数学を習得したい場合は、以下の本などがおすすめです。

機械学習がどんな計算をしているのか、よく理解できる本です。内容も大変分かりやすく、高校数学に不安があっても大丈夫です。



AI案件への早期参画がAI開発のスキルを伸ばす

人工知能プロジェクト案件に、早期に参画することを狙います。

そこでまず目指すべきゴールは、Pythonと機械学習ライブラリを使ってプログラミングが滞りなくできるところです。エンジニアの方にとって、Pythonの習得は大きな問題にはならないでしょう。

「①Python」と「②機械学習ライブラリの知識」を身に付けることで、AI案件の前処理担当やデータサイエンティストの元で手を動かす機械学習エンジニアとしてプロジェクトに参画できる可能性が高まります。

早期参画のためには、まずここを目指すべきです。

「機械学習の知識をしっかり身に付けてから機械学習の仕事をしたい」と思われる気持ちは分かりますが、そんなこと言っているとあっという間に定年を迎えてしまいます。まずはPythonと機械学習ライブラリの習得に全力を尽くしましょう。

機械学習の知識にしても、プログラミングを実践で開発しながら、いろいろ調べていった方がはるかに学習スピードは速いです。

そして当たり前の話ですが、あなたが今取り組んでいるAIや機械学習の勉強は、AIエンジニアとして仕事を得ることで実を結びます。そのため、ポジションの獲得も視野に入れて欲しいです。

AIエンジニアになるための転職・求人エージェント2選

AIエンジニアの採用が本格化するのは、2020年以降になるでしょう。大企業のPoCが一巡して必要なスキルセットを理解し、人材戦略に落とし込めるようになるのがそのあたりだからです。

今のうちに転職エージェントに相談しておけば、良いAI案件に関われる可能性があります。

AIの活用案件は、IT業界やウェブ業界に多いため、テクノロジー業界に特化した転職エージェントがおすすめです。 人工知能や機械学習を理解していないエージェントに、適切なスキルマッチングはできないからです。

現役AIエンジニアがおすすめする転職エージェントを2社ご紹介します。

①TechClipsエージェント

年収を上げたいなら、「TechClips(テッククリップス)エージェント」がおすすめです。
特徴は「高年収・高待遇の求人に特化している」ことです。100%の求人が、年収500万円以上です。2019年前半の実績では、転職者の年収UP率は93%です。

特に、AI・機械学習、データサイエンティスト分野などの求人が非常に豊富のため、ITエンジニアから高待遇のAIエンジニアになりたい方におすすめできます。

また、Tech Clipsエージェントで取り扱う求人は、「下請け企業の求人はゼロ」です。取り扱う求人は自社開発企業のみ。つまり、エンジニアを軽視するブラック企業に入社するリスクを極限まで減らせることが可能です。

「現役のITエンジニアでこれからAIエンジニアを目指す方」におすすめです。

 

②マイナビIT AGENT

未経験からAIエンジニアを目指すなら、「マイナビ IT AGENT」がおすすめです。
マイナビは1000名を超える営業体制を構築しており、最大手から優良ベンチャーまで数多くのAI業界の求人を保有しています。非公開求人は80%を超えます。特に大手IT企業やインターネット企業のAIエンジニア職の求人が豊富です。

営業体制が盤石のため、企業の内情にも詳しいです。離職率の高い企業や労働時間が長い企業など、マイナビならではの情報を聞くことが出来ます。表面的な業界知識だけではなく、職場環境や会社の雰囲気について情報収集している数少ない転職エージェントです。

またサポートが非常に手厚いため、他社の転職エージェントと比べ、利用者の満足度が極めて高いです。20~30代でIT・WebエンジニアからAIエンジニアを目指す方におすすめします。


※本記事には、マイナビ、TechClipsのプロモーションを含みます。

一度登録してしまえば、あとは手間なく案件紹介が無料で受けられるので、上手に利用して転職活動することがおすすめです。私自身、いろんな転職エージェントからサポートを受けて、未経験からAIエンジニアになれました。

転職の体験談:転職エージェントにボコボコにされて未経験からAIエンジニアに転職した話

おわりに

SEからAIエンジニアに転身することは、極めて有益なキャリア戦略だと感じます。なぜなら、実際に転身して、給料や役職を大きく伸ばした人を周囲で何人も見ているからです。

ディープラーニングなんて最小二乗法で誤差関数を最小化しているだけですし、難しいことはライブラリがやってくれます。時間と学習環境さえ用意できれば、短期間で開発できるようになります。

システム開発に強いAIエンジニアの市場価値がどこまで高まるか、今からとても楽しみです。