この記事は、以下の方向けに執筆しています。

・現在ビジネス系職種でAIに興味がある方
・今のAIブームに乗りたい方

AI市場の成長はデータ量が増えているから

IDC Japanが、国内のAIシステム市場は5年で16倍に急成長すると発表しました。2021年の市場規模は、2016年比で16倍となる2500億円とのこと。ビジネス領域でのAI活用がいよいよ本格化するそうです。

なぜこんなに市場が成長するのでしょうか。ハードウェアやディープラーニングの進化も理由にあげられますが、一番の理由はデータ量が増えたからでしょう。

2020年に世界のデータ量は、44兆GBになると言われています。この44兆GBのデータを、世界中のAIエンジニアが分析するわけです。しかもデータ量は、年間40%とかで増えていきます。そりゃ人材不足になるのも当たり前かもしれません。1GBのデータの分析でも相当きついですからね。

この44兆GBのデータを、いかに自社で集め、いかに活用していくかが今後の企業戦略のカギでしょう。そしてデータ活用の主役はAIです。ではAI時代のキャリア戦略としてどんなポジショニングがあるのか、考えてみたいと思います。

AIとの付き合い方

AIとの付き合い方は、4種類あるように思います。
人工知能2

ちきりんさんのブログを参考に作成しました。

1.AIの仕組みを設計する人

どんなAIを作るか考える人です。AIを使った新しいビジネスを考えたり、AIを社内でどう利用するか考えることが仕事です。競合他社や顧客を見ながら、自社としてAIを活用するか戦略的に考えることが求められます。

彼らは起業家であったり事業会社の社員だったりします。AIのプログラム開発は行いませんが、AIでできることを理解しています。要は発注者側の人間です。

2.AIを開発する人

実際にAIを開発する人です。発注者と合意した分析テーマを実現するため、AIの開発を行います。データの前処理やプログラム開発を行い、作ったモデルを評価します。AIのスペシャリストであり、いま最も人材不足が叫ばれている職種です。

3.AIを使う人

出来上がったAIを利用する人です。仕事内容の一部はAIに任せることで、自分の本業に集中したり、AIのサポートを受けて、生産性を上げることが出来ます。

営業業務をイメージしてください。AIが事務作業を肩代わりしてくれたら嬉しくないですか。面倒な事務作業から解放されて、たくさんの顧客に訪問できるため売上は倍になるかもしれません。

4.AIを使わない人

会社でAIの導入が進んでいない企業にいる人です。競合他社がAIを活用して業務革新している一方で、AIの恩恵を全く受けることが出来ません。

パソコンを使いこなしている会社と、電卓を使っている会社を比べて、どちらが生き残る可能性が高いでしょうか。また、AIを使って診断精度を高めている病院と、昔ながらの病院とどちらに通いたいと思われるでしょうか。

3と4の間で、これから格差が拡大すると警鐘を鳴らす識者もいらっしゃいます。

AI活用で収益貢献できるかどうかが大きな課題

4つのポジションを概観すると、花形は2の「AIを開発する人材」です。昨今のニュースで高額年棒が取り沙汰されているのも2の開発人材です。

しかし、そもそもどんなAIを開発すべきなのか、AIを活用してどう収益を高めていくかを考えるのは、AIエンジニアではなく、1の「AIの仕組みを設計する人材」です。最初に定めた分析テーマがそもそも実現できないようなテーマであったり、高精度のAIを実現しても収益貢献が低い場合、プロジェクトは失敗となります。ただでさえ枯渇しているAIエンジニアの時間を、無駄にしてしまうことになります。

ディープラーニングの進化と共に、プロジェクトの成功事例を世の中全体で貯めていかなければ、第3次AIブームも終わってしまうかもしれません。最悪のシナリオは、アメリカと中国がAIの恩恵を受けて莫大な収益を獲得し、日本だけがAIでまったく稼ぐことが出来ないパターンです。

しかし、収益貢献できるAIの仕組みを考えることは、簡単な話ではありません。
例えば自社でAIを導入する場合、まず競合他社のAIの事例を調べて世の中のトレンドを把握し、次に自社のビジネスプロセスを分析し、AIを導入できそうな領域を特定をします。その後にAIの開発方法を検討し、導入後にどのくらい収益に貢献するか予想することが求められます。

そもそもタスクとして難易度が高いことに加え、AIとビジネスの両方の知識が必要になるためハードルが高いです。また、AIを活用した新サービスを考える場合はもっと大変です。あまりに大変すぎて言語化する気にすらなりません。

ビジネス人材からAIを設計する人材になる方法

「AIの仕組みを設計する人材」になる方法は、2つの方向性がありそうです。

①AIエンジニアなどAIに詳しい人材が、ビジネス知識を身に付ける。
②ビジネスに詳しい人材が、AIの知識を身に付ける。

もし①のような人材がいれば、企業から死ぬほどモテるでしょう。ぜひCTOなどに就任頂いて技術視点とビジネス視点から最適なAI活用戦略を立案し、企業と社会の繁栄に貢献頂きたいと思います。しかし、そもそもAIエンジニアの絶対数が少ないため、このケースは現実的ではありません。

そのため、②のような人材が求められます。特に、地頭が良く豊富なビジネス経験を積んだ戦略コンサルタント出身者には、大きな期待がかかるところです。特に学習能力の高さが素晴らしいです。彼らは、短期間で大量の知識を吸収して分析を行い、顧客に課題解決ストーリーをプレゼンできるのです。

またマーケターの方々は、市場というブラックボックスについて、仮説を立てて、施策を実行し、データで検証するということを日常的に行っているため、AIとの親和性がとても高いです。データで検証する部分がAIに置き換わるだけですから。

ポイントは、「AIの仕組みを設計する人材」に求められるAIの知識レベルが、AIの概要を知っているという表層的なレベルではなく、AI開発のスキルまで必要になることです。このレベルでやっと、発注前にデータから事前検証を行うことができ、かつAIエンジニアと建設的な議論が可能です。

最終GOALとして、企業のデータを見て、「あ、これは精度出ないな」と見切れるレベルに達することができれば素晴らしいです。データからプロジェクトの成否を見切ることができれば、失敗プロジェクトを防止し、実現可能な分析テーマを設定することが出来るからです。

しかし残念なことに、AI開発のスキルは、なかなか本を読んでも身につきません。データ分析の実務経験からでしか身につかないのです。またAI開発経験を積んだ後に、「AIの仕組みを設計する人材」に転身しなければなりません。そのため、以下のステップをご提案します。

STEP1 AIの本を10冊読んで概略を掴む

立ち読みでもよいので、ざっくりAIのイメージを掴みます。1冊を精読するより、10冊程度斜め読みした方が理解が深まります。あえて精読するならば、やはり松尾先生の本がおすすめです。



STEP2 AIのプログラミング経験を積む

pythonとsklearnで、クラスタリング、SVM、ランダムフォレスト、重回帰、ロジスティック回帰、ニューラルネットワークを実装できるところがGOALです。また前処理、特徴量設計、モデル評価の知識も必要です。
「python機械学習プログラミング」の第1章、第3章、第4章、第6章、第10章、第11章、第13章を読んで写経されることをお勧めします。


参考記事:AIエンジニアが教えるゼロから機械学習の勉強法

STEP3 AI開発の経験を積む

実際に企業内のデータで分析業務を行います。一番手軽な方法は、自分の部署や他部署からデータを借りて分析させて貰う事です。データを借りる時には、現在の業務課題や達成したいことをヒアリングし、機械学習で貢献できるような分析テーマを握りましょう。業務の一環として、AI開発業務を行ってしまうのです。

注意事項は、あんまり容量の大きいデータを貰うとハイスペックのマシンが必要になってしまうことです。1GBを超えてくるときつくなるので、データは数百MBに抑えた方がいいかもしれません。

STEP4 企画書を提出する

ここまでくると、あなたは豊富なビジネス経験に加え、AI開発の経験も積めたわけです。そろそろ行動を起こす時です。

まず自社でAI導入の可能性があるかどうか考えます。社内ヒアリングをかけて、可能性を検証しましょう。もし可能性が見込めるならば、上司にAI導入の企画書を提出します。STEP3で成功事例を作れているならば強いアピールになります。また失敗事例でも、そこから学んだことをレポートにまとめ、次は失敗しないということを企画書に盛り込みます。

企画書の方向性は、「100億円の売上をAIで1%改善する」か、「100人分の仕事をAIで置き換えて人件費削減する」的な方向性があります。

経営者や管理職は、やる気があり、新たな提案をしてくれる人の話を喜んで聞くものです。なぜなら本来自分たちが考えるべき事項を先回りして考えてくれる人がいれば、自分たちが楽だからです。

企画が通りお金を調達できれば、あなたがAI案件の発注者です。

(オプション)AI推進部署/AIコンサルティング会社への転職

残念ながら、提案した企画書が却下される場合もあるでしょう。この場合は転職を視野に入れます。候補は、事業会社でAI導入を推進する部署、もしくはAIに注力しているコンサルティングファームです。いずれにせよ特殊な案件になるので、業界に詳しい転職エージェントに相談してみることをお勧めします。

急に転職するとなると焦ってしまうので、事前にエージェントに希望条件を伝えておいて、希望のポストが出てきたら連絡を貰うというスタンスを取るのが良いと思います。
また、信頼できるエージェントと緩く繋がっておくと、何かあったらすぐに相談できるようになるため、精神衛生上悪くない効果を発揮します。オプションを持っておくと安心感が生まれますので。



いくら優秀なAIエンジニアを集めても、「AIの仕組みを設計する人材」がダメだと全部だめになってしまいます。AI設計人材の層の厚さは、今後の国際競争力を考えても非常に重要です。例えばAIを活用した業務代行サービスなどをクラウド上に構築すれば、全世界でBPOできるので莫大な収益が見込めます。

先行優位性が働きやすい市場のため、「AIの仕組みを設計する人材」の育成が最も急務ではないでしょうか。