AI人材の給与が高騰中です。米国のAI研究者やAIエンジニアは、大学で博士号取得した人や職歴が数年程度の人が、年収5000万円の給与を得られるようです。

東洋経済:年収5000万円もザラ、米AI人材のヤバい報酬

AI人材は、社会的ニーズが急速に高まったことから極めて希少性があります。需要に供給が追いついていないため、高値がついています。それではAI人材の主役であるAIエンジニアは、高収入で幸せなキャリアが約束されているのでしょうか。


AIエンジニアが高収入なのはレバレッジが働くから

AIエンジニアの仕事は、データを使ってビジネス価値を出すことです。収益の改善策を立案したり、業務を自動化したりします。

例えばですが、1兆円の売上を1%改善すると100億円の価値を生みますが、1億円の売上を1%改善しても100万円の価値にしかなりません。また、1万人分の仕事をAIで置き換えることと、10人分の仕事をAIで置き換えることには、生まれる価値に大きな差があります。

そのため大企業では、高額の給料を支払うインセンティブが働きます。たとえ年収5000万円で雇ったAI人材が即戦力でなく、最初の1年間は給料に見合った価値を生み出さなくとも、2年目にがんばって売上100億円の生産性を1%でも上げてくれれば、元は取れる計算になります。

AIエンジニアの仕事は、ゼロから新しい価値を生み出すことではありません。既存業務を分析して強化することです。100を110や120にする仕事です。付加価値は掛け算です。

つまりAIエンジニアが高収入を望むなら、大企業に入る、もしくは大企業の仕事を受けることです。
AIベンチャーのPKSHA Technologyに高い株価がついている理由一つが、大企業向けにAIを導入しているからです。また、フリーのAIエンジニアとして大企業の仕事を受ける人材は、数千万円の収入も可能でしょう。

AI研究者の年収が研究開発費に依存していることに比べ、企業の収益に直結する価値を生み出すAIエンジニアは、より多面的なキャリア構築が可能です。また社会的に求められる人数も、AI研究者よりAIエンジニアの方が多いです。AIの社会実装が進むほど、顧客ニーズが多様化し、実務家が求められてくるからです。

AI案件の成功可否は上流工程で決まる

AIエンジニアは高収入で、多面的なキャリア構築が可能で、今後ますます必要になると書きました。ではAIエンジニアは幸福なのでしょうか。以下の図をご覧ください。
人工知能3

AIエンジニアは、顧客への成果物として学習済みモデルを納品します。成果物を納品するという事は、顧客要求の達成義務があります。つまりAIエンジニアは、精度から逃げることが出来ません

ビジネスに現実的な価値を生み出すのがAIエンジニアならば、現実的な責任を取るのもAIエンジニアです。アルゴリズムを研究しているAI研究者や、コンサルや提案活動を行うAIコンサルタントやAI営業は、言い方が悪いですが逃げられます。

しかもAIエンジニアは、どんなデータを解析するか事前に把握出来ないことも多いです。顧客から渡されたデータがスカスカだった時の絶望感は半端ないです。どんな高スキルを持ったAIエンジニアでも、ゴミから価値を生み出すことはできません。案件を持ってきたAI営業に、怒りをぶつけることでしょう。

だからこそ案件を受注する前に、AI営業やAIコンサルタントが案件の目利きができれば、プロジェクトの成功確率は大幅に向上できます。プロジェクト成功のキーマンは、AIエンジニアではなくAI営業・AIコンサルタントなのです。

参考記事:欧米企業に負けないために AIビジネスの「構造」と戦略を分析

AIコンサルタントの要求スキルと年収水準

AIプロジェクトの成功は、一企業の話だけではなく、日本全体のAI案件を推進するためにも必要なことです。世の経営者がAIに幻滅する前に、1つでも多くの成功事例を作り、失敗案件を減らす必要があります。そして、そのカギを握るのは上流工程のAIコンサルタントです。

AIコンサルタントに求められるスキルは、例えば以下のようなものが挙げられます。

・顧客業務をヒアリングして、実現性の高い分析テーマを設定するスキル
・顧客が貯めているデータをヒアリングして、分析内容をイメージするスキル
・サンプルデータを見て「あ、これは精度出ないな」と見切れるスキル
・業務要求の達成が難しいと判断したら、案件を断るか実現可能なテーマに変更するスキル

いずれも"AIの深い知識"がなければできません。また、"顧客との合意形成"という高レベルなコミュニケーション能力も求められます。

参考記事:デジタル化(DX)の要求定義できる人材いますか

現在、AIエンジニアも不足していますが、それ以上にAI営業・AIコンサルタントも不足しています。パナソニックやダイキン工業が、多額の投資をして自社育成をはじめました。また最近、厚生労働省と経済産業省が、人工知能(AI)やデータ解析などの取得に助成すると発表しました。AI人材の不足感は明らかです。

逆に言うと、IT業界に在籍している営業職やコンサルタントにとっては大きなチャンスです。ITの知識を持ち、顧客と合意形成する経験を積んできた営業職やコンサルタントの方は、AIの知識を身に付けることで一気に市場価値が高まるでしょう。

大企業にAIの導入を支援するAIコンサルタントは、求人の多くが年収1000万円を超えます。外資コンサルにマネージャー職で転職した人に話を聞くと、日系よりも管理職の権限が大きく、なかなか良い思いが出来るようです。
単純にコンサルティングファームの年収が高いということもありますが、「経営層の期待値」から「システムの要件定義」に落とし込むという超重要タスクに、安い年収が付くはずがありません。

またコンサルティングスキルや営業スキルは、机上で学ぶことが難しく、実務経験者の価値は高まります。また、将来的にDX推進マネージャーのような役割を担い、自社や顧客でのAI導入の旗振り役として活躍する道もあります。

そのためには、まずコンサル・営業職の実務担当者の方が、AIの知識を身に付けることが第一歩になるのではないでしょうか。


※上記の書籍は、「Python機械学習プログラミング」より優しめです。

AIコンサルタントに転職する方法

私自身は、企画職からAIエンジニアに転職しました。具体的な独学方法は、「Python機械学習プログラミング」という技術書と「統計検定2級」の2つが勉強の柱でした。正直に言うと、未経験からプログラミングスキルと機械学習の知識を身に付けることはかなり大変でした。

ただAIコンサルタントへの転職なら、だいぶ勉強のハードルは低いです。私自身もAIコンサルタントを転職の視野に入れていましたが、自分の中にエンジニアコンプレックスがあったので、意地でもAIエンジニアにこだわっていました。

今の仕事内容には満足していますが、過去のビジネス経験を活かすなら、AIエンジニアよりAIコンサルタントの方が活躍できただろうなとは感じています。

転職の体験談:転職エージェントにボコボコにされて未経験からAIエンジニアに転職した話

私自身の経験と周囲のAIコンサルタントに転身された人の意見をまとめると、AIコンサルタントに転職する方法は、以下の手順が効率的と思います。

転職までの手順
①機械学習を勉強する。目指すゴールは、サンプルデータからPythonと機械学習ライブラリを使って学習済みモデルが作成できるところまで。
②上司に機械学習を勉強していることをアピールする。社内にデジタル案件があれば手を上げて実務経験を積む。
③これまでの業務経験から「顧客の課題を整理した経験」「システム開発の上流工程経験」「データ分析経験」を棚卸する。
④転職面接では「機械学習の問題設定ができること」「独学で勉強できるマインド」をアピールする。

最近のコンサル会社は、デジタル案件のPMO人材を増やしているので、システム開発の上流工程やチームマネジメント経験は高く評価されるようです。


おわりに

Excelと同じような感覚でAIが利用され、社会に浸透していく現在、生き残る方法は人工知能が出来ない仕事をするか、人工知能を作る仕事をするかです。
AIコンサルタントとして情報革命の最前線に立つことは、キャリア形成の筋の良い一手だと感じます。

合わせて読みたい:未経験からAIエンジニアになる方法