理系研究者は、この大自然を対象に、仮説を立て、実験を行い、データを集め、法則を発見している。
一方データサイエンティストは、企業を取り巻く市場環境や生産設備などに対して、データを集め、分析し、パターンという法則を発見する。 その法則は、自然科学分野のような普遍性は持たない。その企業でしか役に立たない局所的な法則だ。しかし、その企業が業績を大きく向上させるくらいの効果は十分に持つ。

データサイエンティストが科学する対象は、主にマーケティングや経営学の領域だ。文系学問の領域に、理系研究者が行うデータによる仮説検証の手法を持ち込んでいる。

経営コンサルタントとデータサイエンティストの比較

これまで、企業活動の分析は、経営コンサルタントの独壇場であった。経営コンサルタントは、自頭の良さを使って仮説を立て、現状分析を行い、課題を整理し、 解決策を提案する。ビジネス環境は年々複雑化しており、経営者だけで理解をすることは不可能だ。そのため、経営コンサルタントには高値がついていた。

しかし、データサイエンティストは、 データから相関関係を抽出し、KPIに依存する要因を即座に発見できる。そこから予測モデルを作成・評価し、モデルの精度が良ければプログラムで実装する。経営コンサルタントがいかに賢くとも、データから導かれる相関関係以上の仮説は出せない。経営コンサルタントが、KPIを改善する要因の上位10個を洗い出すのに、いったいどれほどの時間と労力がかかるのだろうか。1か月では終わらないだろう。

また、経営コンサルタントが解決策の提案で終わることに対し、データサイエンティストは予測モデルの実装という仕組化まで用意する。経営コンサルタントの価値が今後大きく下がることは自明なことだ。

経営コンサルタントの方へ

データのない領域で強みを発揮すること。 
例えば、起業や新規事業開発などは過去のデータがないため、データサイエンティストは手も足も出ない領域だ。また経営コンサルタントの自頭が活かしやすい領域でもあるはずだ。そのため、オープンイノベーションなどに絡むなどして、0→1フェーズに強みを持つことをお勧めする。

また、人工知能関連の基礎知識を身に付けて、AIに強い経営コンサルタントとして活躍する方向もある。世の中のニーズは非常に高いだろう。その際は、こちらの書籍一覧から好きなものを選んで学んでみてほしい。

データサイエンティスト志望の方へ

RとPythonの2つの言語が考えられるが、近年の人工知能ブームを踏まえPythonを強くお勧めする。Python機械学習プログラミングを読めば、1カ月程度でデータサイエンスの基本的なスキルを身に付けることが出来る。
この分野の最も効率的な方法は、理論を学んだあとに、実際にコーディングしてみることだ。本書はその通りの構成になっている。

データサイエンティストの方へ

データサイエンティストではなく、ビジネスサイエンティストになろう。現在の日本では、データサイエンティストの年収はそこまで高くない。これは、日本が歴史的に情報分析に金を払ってこなかったためであるが、文句を言っても仕方がない。
そのため、データ分析をコアとして、あくまでビジネスを科学する人材になろう。経営コンサルタントが年収1000万円稼ぐのだ。ビジネスサイエンティストが、年収2000万円を超えてもおかしくない。

そのためには、そのデータがどうやって取得されたのか、データの背景を理解することが求められる。顧客データと一言で言っても、顧客がリアルな行動を起こした結果そのデータが生まれている。リアルな行動とデータを比較した場合、当然ながら情報量は落ちている。落ちた情報量は、データ分析者の想像力で補完するしかない。また顧客行動が想像できていれば、他に必要なデータを経営層に提言することもできるようになる。
 
ここで改めてデータサイエンティスト協会が用意してくれた、データサイエンティストのスキルセットを見てみよう。
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ビジネス力が一番上にあることに注目してほしい。現実の課題を解決することで、初めて価値は生まれる。企業のデータを科学することは、リアルなビジネスを科学することだ。 データは金より価値があるという事を共に証明しよう。
 

参考記事:AI人材になるにはスキルよりまず職種を選択しよう