「人工知能を活用した新規事業を立ち上げよう」

こう決意したのが、早数ヶ月前。 
2020年には23兆円に成長するというAI市場について、一石投じてみたかった。市場の0.1%でも取れれば、年間230億円の売り上げが見込める。こんなチャンスがあるマーケットは他にないと思ったからだ。
 

当時人工知能について何の知識もなかった僕は、関係しそうな本を片っ端から読みまくった。

松尾先生や安宅和人さんの本を読んで人工知能の概略を理解した。
Wekaの本を読んで、アルゴリズムの活用法を学んだ。
西内啓さんの統計学の本も2冊読んで、AIと極めて親和性の高い統計学を理解した。
メタップス佐藤さんやGoogleのエリック・シュミットさんの本を読んで、AIが進んだ未来像を把握した。
・自分で実装できた方がいいと思い、Pythonの学習にも手をつけた。
・その他、機械学習と名のつく本を読みこみ、自然言語など非構造データの扱いも理解した。

またGoogleでAIや機械学習で検索し続け、最新事例の情報収集を続けた。機械学習関連の論文もネットで検索して50本は読んだ。

全ては、AI事業を立ち上げるためだった。でもなかなか立ち上がらないのだ。理由は3つあると感じた。

1.技術領域が多岐にわたりかつ深いので体系的な理解が難しい

人工知能は、機械学習の技術が軸となるが、この機械学習という概念が難しい。一言でいうと、"過去データに基づいて未来のデータの値を予測するモデルを作る技術"なのだが、このモデルの作成が難しい。モデル作成には、データとアルゴリズムが必要なのだが、このアルゴリズムが難しい。それぞれに数理的な背景があって生まれており、その特徴を理解しなければ、AIを使いこなすことが出来ない。

また、テキストデータを扱う場合、自然言語処理への理解が必須となる。TTMなどフリーツールが充実しているので、検証環境にはあまり問題はない。しかし、例えばワトソンのような類似したテキストデータを予測するモデルを作る場合、形態素解析はもちろん、テキストデータのベクトル化、TF-IDFやcos類似法などの理解が必要となり、だんだんと深みにはまっていく。しかも、その方法以外に他の方法も提案されており、どれを行えばいいかは実際にデータを使って検証してみる以外にない。市場ニーズと比べ、技術的な体系化が進んでいない状況になると感じる。アルゴリズムもマイクロソフトのチートシートよりまとまったものはない状況だ。

あと、ビックデータとの違いもかなりあいまいで、一応ビックデータはデータの見える化、AIはデータを使った予測ツールとか言ってごまかしているが、正直、統計処理を用いた高度なビックデータは、AIとほぼ同じであるし、AIを導入する前に、データを見える化した方がいい事は、論を待たない。

要はと技術的にとても難しいので、その理解に膨大な時間がかかるという事だ。

2.データを持っていない

一番の致命的な理由はこちら。人工知能を作るには、データとアルゴリズムが必要なのだが、どんなデータに対しても最適なアルゴリズムというものは存在しない。アルゴリズムは種々の特徴があり、データの特徴を理解しなければ、最適なアルゴリズムを選ぶことが出来ない。つまり、予測精度の高いモデルを作るには、試行錯誤が必要だ。

しかし試行錯誤には、データが必要なのだ。アルゴリズムは、Wekaなどフリーのツールを使えば、なんとかなるかもしれない。しかしデータはなんともならない。試行錯誤できないならば、顧客に価値を証明できない、顧客に価値を証明できないならば、データを借りることが出来ない。鶏卵みたいな関係になる。

顧客からどうやってデータを借りるか、もしくはデータを取得する仕組みを作るか。営業的かつ業務的な問題についても、明確な答えを見つけておかなければならない。

3.人工知能は面白すぎる

これは一部の人が陥る罠だと思うのだが、この技術は大変奥深く、可能性を秘めており、知的好奇心をくすぐられる。いくら調べても飽きないのだ。しかも技術や事例は、文字通り日進月歩で進化しており、このスピードは加速度的に速くなっている。こうなると「知りたい」という欲求が高まってきて、事業化への優先順位が自分の中で落ちていってしまう。

これはなかなか問題で、調査のための調査ということになってしまう。そして調査した内容を試したくなるので、疑似データを使って検証してみる。最近は、オープンデータがネットに転がっているので、検証用のデータはある程度揃ってきた。そして、今僕のPCには、控えめに言ってあまり役に立たないモデルであふれている。そしてこんな記事を書くようになってしまう。誰かが止めるべきなのだ。

だが、僕はまだ事業化を諦めていない。決意を秘めながら、僕はまた明日からGoogleに「人工知能 プレスリリース」と打ち込む作業に勤しむつもりだ。



(追記)
技術がないと話にならないことが分かってきたので、未経験からAIエンジニアを本気で志しました。特に参考になった本は以下の2冊です。





プログラム開発までに身に付けた知識は、ここここの記事にまとめておきました。

現場からは以上です。