IBMワトソンへの期待値が止まりません。人工知能技術から見た場合、決して技術的水準は高くないワトソン。しかし、メガバンクや自動車など多くの分野で検討・活用が進んでいます。

ワトソンがその枯れた技術で、どこまで市場を席捲できるのか。AI市場は技術ではなくブランドが勝つのか。今後の注目ポイントです。

先週の記事はこちら 


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1.今週の人工知能ニュース

IBM Connect Japan 2016 特設サイトをオープンしました
http://ibmevent.jp/watsonsummit2016/news_detail.php?news_id=20
5/27(金)から事前申し込みが始まりました。
混むことが予想されるので、参加希望者は早めの申し込みをお勧めします。無料です。

1100万ダウンロードの写真SNS「Snapeee」運営元が倒産 「ギリギリまで試行錯誤」も事業化できずサービス終了

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1605/30/news110.html
写真共有サービス大手のSnapee倒産です。Instagramの成功例とは、何が異なったのでしょうか。
負債総額も4000万円弱。いくらでも買い手がいそうなものですが・・・。 
 

本当に「労働力」は不足するのか?-AIとロボットによる労働代替化の行方

http://blogos.com/article/176679/
AIに仕事が奪われ、今後人間はどうやって所得を確保すればよいかという問題提起の内容でした。


2.今週の人工知能銘柄

今週は、画像認識分野に強い2社です。

株式会社モルフォ(3653)

売上高 2,037百万円 営業利益 742百万円
時価総額 約431億円
PER65倍 PBR 11.4倍
平均年齢37.5歳 平均年収6,950千円
企業情報 手ぶれ補正などスマホ向け画像処理ソフトのロイヤルティ収入が柱。監視カメラ用なども育成
東大ベンチャーの本格派。画像認識の要素技術を保有。
携帯電話など組込みシステムに注力しており、BtoBの手堅いビジネスを推進。
現在国内ほとんどのメーカーに採用されている。台数ベースで約11億台!


画像認識技術の特徴は、言語に依存しないため、グローバルの壁がないということです。
そのため、勝つときは大勝ちするし、負けるときは大負けする傾向があります。

一方、手振れ補正技術や顔検出技術では高い精度を誇っており、どちらかといえばToCに強いオムロンと比べても、技術的優位はあると言えるでしょう。

この会社の凄さは、顧客ターゲットに組込み系を選んだことです。しぶい。そこやるかという感じですが、NECなど大手に順次導入され、安定した利益を生んでいます。また、コア技術戦略で、画像技術から多くの利用シーンや海外展開を狙っており、今後の成長は期待できます。


PERは65倍、PBRは11倍。
期待値は成長戦略への評価と、東大発ベンチャーで優秀な技術者を抱えていることに対してでしょう。コア技術戦略は、プロダクトアウトに比べ、リスクは低いです。なぜならある分野の事業化で一度撤退しても、コアがしっかりしているので、すぐに次の分野での活用を考えればいいだけだからです。成長戦略でも、車体カメラ、監視カメラなど、市場の広がりは大きいです。

勝てる戦略とビジョンは持っているように思います。営業利益率も素晴らしいです。

転職先としては文句なし。優良企業です。待遇良いです。でも入社は難しいです。Googleみたいな問題解かされます。この会社でエース級の技術者になることが出来れば、キヤノンやソニーさんが手土産片手に採用してくれるはずです。

◆転職先の視点
待遇、給与、職場環境ともに、とても魅力的です。ぜひ入社しましょう。

転職先おすすめ度:★★★★★
 

日本電気株式会社(6701)

売上高28,212億円 営業利益1,073百万円
時価総額 約6668億円 
PER13倍 PBR 0.8倍
42.7歳 平均年収 7,690千円 
企業情報 通信インフラ設備で国内首位。ITサービスを強化。顔認証技術の国内外での展開を進める

ご存じNECさんです。人材育成意欲が高く、社員の質も高く、企業風土も悪くない。 確かに業績は下降トレンドです。2015年の目標も全然達成できませんでした。でもここの顔認証技術はすごいんですよ!モルフォの技術を最初に採用したのもNECです。

実は数年前にクラウドが流行りだす少し前から、データセンタ事業に注力し、大胆な経営判断を見せていました。地味な(控えめな)会社ので、多分気づいてたのは僕とNEC社員くらいだと思いますが。

2018年までの中期経営計画では、AIに注力すると宣言なされました!
これまでやってきたクラウドやデータセンタとの相性抜群ですね!



NECはAI銘柄です。その証拠に、モデル作成時の予測分析にかかる時間を短縮する「特徴量自動設計技術」を開発しました!
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/081802659/

流行りのディープラーニングは、パラメータ設定が大変なことと数万件以上の大量データが必要になるため、導入できる企業は極めて限られます。
しかし、このNECの技術は、特に大量データが必要というわけではありません。コンピュータが自動で最適な特徴量を設定してくれるため、通常データサイエンティストが行う試行錯誤を自動化してくれます。業務データにおけるAI導入の大きな課題は特徴量設計ですが、この課題解決に大きな役割を果たしてくれるでしょう。

NECさんは地道に研究開発を積み重ね、地道な成果を生み出し、法人向け中心に回復の兆しが見えてきました。ぜひ今後に期待したいところです。
  
◆転職先の視点
地味に給料良いですね。平均年齢が高いのもありますが、平均年収769万円です。 
仕事もそこそこ忙しいか普通くらいでしょう。
おすすめです。しかし、富士通さんほどではありませんが、配属リスクはやや高いです。

転職先おすすめ度:★★★★☆
 

3.Snapeee倒産は経営陣が無能だったからなのか

Snapeeeを運営していたマインドパレット社が倒産しました。
1100万ダウンロードを誇ったメガベンチャー企業でした。
開発費が先行し、1億7千万超の赤字にまでなったとのこと。

アプローチが難しいと言われる、F1層の顧客をターゲットとしていた。広告で回収できなかったのだろうか。また、この画像処理を分析して、日本が誇る"KAWAII"を科学する道は無かったのだろうか。時価総額100億円がついてもまったくおかしくない。それだけの顧客基盤と画像データを持っていた。

先行の開発案件はきつい。どうしても当初見積もりよりも高くなるし、その度に資金調達が必要になる。VCもまたかという顔をするのだろう。でも追加開発からは逃げられなかった。ユーザーが増えたのだから不具合は見つかるし、サーバーは増強しなければならないし、ヘビーユーザーをつなぎとめる施策も打つ必要がある。


気が付いたらお金が無くなってしまったのかもしれない。経営の意思決定に問題があったのかもしれない。


それでも僕は、経営陣を最大限に評価したい。今の経営陣が、1100万人に受け入れられるサービスを作ったことは事実だ。そんなこと他の99%の人にはできないのだから。

考えて試行錯誤を続けてその結果、彼らの描いたビジョンはほぼ達成できたのだ。サービスが止まって迷惑をかけるかもしれない。いや確実にかけるだろう。なにせ明後日にはサービスが停止するのだから。

それでもSnapeeeの経営陣は、本物のイノベーターだったと思う。B/SとP/Lを見る経営者としてではなく、サービスを作り出す事業家として卓越した結果を残したと思うからです。



※当記事は特定の銘柄の購入を誘導するものではありません。投資は自己責任で行ってください。また、内容は信頼性を保証するものではありません。
※時価総額、PER、PBRは、掲載日前後の株価をもとに掲載しております。