読みました。タイトルのミーハー感にこれまで敬遠していたのですが、内容は素晴らしい本でした。

 
著者の西内さんが言う「統計学は最強である」との主張は、本当にその通りだと感じました。
この本を企業のマーケターが読むとどうなるのか、2つのケースでご紹介したいと思います。

ケース① マーケティング施策会議

部長「うちの新商品である"飲みのミカタ"の売上が伸びない。何か施策を打ちたい。」
先輩マーケター(以下先輩)「原因は何でしょうか」
部長「以前ユーザーにアンケートを取った結果がこちらだ」
先輩「過去1カ月にうちの広告を見た人が10%しかいないじゃないですか!」
部長「思ってたより伸びてないねぇ」
先輩「プロモーション戦略が弱い可能性が高いです。もっと広告を打ちましょう!」
ぼく「あのー、いいでしょうか」
部長「なんだ、言いたいことがあるのか」
ぼく「はい。広告を今よりたくさん打っても、売上にはあまり寄与しないと思います」
先輩「はー、何言ってんだ。消費者に商品の認知が足りていないのは明らかだろう!」 
ぼく「アンケート結果を、商品購入者と非購入者で比較してみたところ、 商品購入者の12%が広告を見ていて、商品非購入者も8%見ています。差が4%しかないため、売れていない大きな要因とは思えません。」
先輩「4%も違うならいいじゃないか!少なくとも4%は伸びるってことだろ!」
部長「ぼく、ならどうすればいいと思うんだ?」
ぼく「商品の割引をすればいいと思います」
先輩「ふざけんな!それで売上伸びなかったら大損するじゃないか!」
ぼく「福岡市の店舗で1割引きで売り出したところ、売上が35%増えたそうです」
先輩「全国で通用するかどうかわからないだろ!」
ぼく「福岡市の結果が偶然起こりうる確率は、カイ二乗検定の結果、5%以下となっています。」
先輩「ぐぬぬ(カイ二乗?)」
部長「なるほど。では全国一律で割引を行おう」

ケース② 次のマーケティング施策会議

~あれから1か月、先輩は必死に統計学を勉強してきた~

部長「うちの新商品である"アミノ酸サプリ"の売上が伸びない。何か施策を打ちたい。」
先輩「待ってました!」
部長「以前ユーザーにアンケートを取った結果がこちらだ」
先輩「アンケート結果を、商品購入者と非購入者で比較したところ、 商品購入者の20%が広告を見ており、商品非購入者は6%しか広告を見ていません。差が14%もあります!」
部長「ほう、そんなにあったのか」
先輩「今回の広告は石原さとみを使ったため、広告効果が非常に高いと考えます。売上不振の原因は、間違いなく広告が消費者に届いていないことです。この差が偶然起こりうる確率は、カイ二乗検定の結果、5%以下となっています。」
部長「なるほど。購入者と広告の認知度には、間違いなく関係性があるということだな」
先輩「その通りです。さっそく広告量を増やしましょう!」
ぼく「まってください」
先輩「なんだよ、お前の唯一の特技取って悪かったなwww」
部長「なんだ、言いたいことがあるのか」
ぼく「石原さとみの広告を増やせば、必ずしも売上に繋がるとは限りません」
先輩「何言ってんだ、このデータは間違いないぞ!」 
ぼく「そのデータが間違いとは言っていません。ただそのデータが示していることは、売上と広告認知度に高い相関関係があるということだけです」
先輩「十分じゃないか」 
ぼく「いえ、相関関係と因果関係は必ずしもイコールではないという事です。つまり、広告を見たから商品を購入したのではなく、商品を買ったから広告が目についただけかもしれません。」
部長「なるほど。ではどうすればいい?」
ぼく「ランダム化比較実験を提案します。当社のWebページで石原さとみを押し出した広告ページと、通常のページをユーザーにランダムに出力し、ユーザーの購入率を調査します。その結果、もし石原さとみの広告ページの方の購入率が高ければ全面的に押し出すべきだと考えます」
先輩「ぐぬぬ(ランダム化比較実験?)」 
部長「なるほど。確かにそうだな。」 
ぼく「ではランダム化比較実験の準備をしますね。」
部長「いや、今回全てのユーザーに対し石原さとみのWebページを押し出す」
先輩&ぼく「え?」
部長「あの石原さとみ様を、試すようなまねができるわけないだろ!」
先輩&ぼく「・・・」 
部長「結論は以上だ」


おわり。