前回紹介した、松尾先生の書籍"人工知能は人間を超えるか"について、もう少し詳しく紹介したいと思います。

人工知能のレベルと労働者階級

この本でまず紹介されていた内容は、人工知能には4つのレベルがあるという事でした。

レベル①:言われたことだけしかできない。例えば、エアコンが温度によって動きが変化するなど。
レベル②:ルールを教えれば、そのルールに則って多彩な動きや判断が出来る。
レベル③:判断軸さえあれば、データからルールを設定・学習してより良い判断ができる。
レベル④:
判断軸を自分で発見し、自分でルールを設定して、判断を下す。

図に表すと、以下のような感じです。
スライド1














 このグラフどこかで見たことがあるなと思ったら、ちきりんさんのブログ"新)4つの労働者階級"でした。
新)4つの労働者階級の"論点リスト" スライド2















人工知能の技術レベルと、社会の労働者階級が似ているというのは、なかなか示唆に富んでいます。


IBMワトソンから見る人工知能のビジネス活用の課題

世の中で最も導入が進んでいる人工知能は、おそらくIBM社のワトソンだと思われます。ワトソンの人工知能レベルは、レベル3にあたるようです。
ワトソンとは、日本語や英語で質問を投げかけると、最適な回答を提示してくれるプログラムです。クイズ大会で優勝した経験を持ち、銀行のコールセンターでは導入のための実験が始まっているようで、特に企業向けでは大きな注目を浴びている人工知能です。

しかし、松尾先生の本によると、ワトソンは質問の意味を理解しているわけではなく、質問に含まれるキーワードと関連しそうな答えを拘束に引っ張り出してきているだけのようです。つまりGoogleの検索と同じというわけです。

つまり人工知能の場合、

判断ができる≠意味を理解する

ということです。
人工知能の判断とは、確率的に一番近いものを検索しているだけであり、 言葉の意味を理解しているわけではないんです。

これは、人工知能のビジネス活用において大きな壁になると思いまして、一番近いデータを探すのが人工知能だとすると、成功例をたくさん集めた"理想データ"が無ければ効果が低いのではと感じました。
それは、分析のための大量なデータが必要なことはもちろんなのですが、たとえ大量データがあったとしても、その中に"理想となるデータ"が含まれていなければ、いくら近いデータを調べても最適な判断を下せないと思うのです。
例えば、売上データを分析した際、Aの行動で受注確率70%、Bの行動で受注確率20%となった場合、当然Aの行動をしろと人工知能は判断するのでしょうが、受注確率90%の行動データが含まれていなければ、その組織はいくらがんばっても70%の受注確率が限界になってしまうでしょう。

人工知能分野の事業化ポイントは、"どんなデータを集めるか"またそれを"どうモデル化するか"という部分でしょう。
また、人工知能を開発するAIエンジニアになる方法論は、こちらの記事にまとめました。
参考記事:未経験からAIエンジニアになる方法


人工知能ビジネスの課題続き